百合コレクション[本]

ガドルフの百合

ガドルフの百合

ちっとも現れない次の町にいらいらしながら、
青く光る柳の葉がブリキに変わったり、曖昧な犬が横切る
“もうすっかり法則がこわれた”場所を旅するガドルフは、
雷雨におそわれて真っ黒な家で雨宿りする。
寄宿舎のような避病院のような建物には、人の気配が
あるようなないような。
窓から覗く白い顔、雷の幻燈に照らされた百合の花を
見つけたガドルフ。


(おれの恋は、いまあの百合の花なのだ。いまあの百合の花なのだ。
砕けるなよ。)


音と色と光といらだちと、唐突な恋と。
雨と黄昏が見せた黒い闇の中に浮かび上がる書割のような
百合の印象がおもしろい。


夢十夜」の第一夜でも百合の花がでてきた。

夢十夜 他二篇 (岩波文庫)

夢十夜 他二篇 (岩波文庫)

「百年、私の墓の傍(そば)に坐って待っていて下さい。
きっと逢いに来ますから」と言い残して死んだ女に言われたとおり
真珠貝で穴を掘って女を埋め、星の破片を墓標にして、日がのぼり
おちていくのを数える男。いく日すぎたかわからなくなった頃、
石の下から青い茎がのびて蕾が真っ白い花弁を開く。
百合に接吻する男は、すでに百年たっていたことに気づく。

こちらはやわらかく匂いたつ百合の花だった。

海辺で[音楽][本]

というよりクーラーの効いた部屋で聴きたい。

So Much for the City

So Much for the City

「Big Sur」もいいし「Don't Steal Our Sun」
にやられた〜。バンジョーの音に弱いな。
ダブリン生れの音は、乾いたビーチを思い起こさせる。


こっちはイギリスの北の海辺。

海辺の王国

海辺の王国

第二次世界大戦の頃のイギリス。戦争で家と家族をなくした少年が、
海辺を犬とともに歩き始める。親切な人、残酷さにゆがんだ人
さまざまな人と出会ってみつけた心の王国とは?

誰もいなくなって犬と歩く時、海辺だけが彼の世界だった。
しかしやがて訪れる現実の描き方は残酷だ。
彼が山という自然に触れてはじめて、彼の世界に戻るところが
好きだ。山、緑、自然にはそんな力がある。

あたたかいのみものとパン[本]

傘はできるだけ持ち歩きたくないので、
ひどいどしゃぶりにあうこともあった。
芯まで冷えて飛び込んだ老舗の珈琲店は、
濃い目のコーヒーにミルク(牛乳じゃない)
を入れたのが定番な店。
ココアありますか?じゃカフェオレ・・・ない。
「ミルク多めにお入れしますね」と作ってくれた
コーヒーがほんとにおいしかった。

Hot Drinks around the World 世界のホットドリンク

Hot Drinks around the World 世界のホットドリンク

世界のあたたかいのみものを集めた本。
エピソードとレシピつきで楽しい。
コーヒーものはどれも美味しそうだけど、
ヨーロッパの方って思い切り甘くするのだな〜。



あったかいのみものでほうっとするように
食べることが、体や頭のスイッチをオンにして
すみずみまで力をくれる時がある。

ささやかだけれど、役にたつこと

ささやかだけれど、役にたつこと

子どものバースデーケーキを予約した母親。
その朝に事故に会い昏睡におちいる子ども。
混乱と恐怖の時間に「子どものこと忘れたのかい?」
と電話がかかってくる。

どこにも起こりうる、耐えがたい不幸な出来事。
不運な偶然は悪意を帯びる。けれど、邪悪ではない。
食べること、小さな、よきこと。

あめふり[本]

もういやだ〜ってほどは降らないなぁ。

しずくのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ)

しずくのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ)

「さあさあふるんだふるんだ
 わがままいっちゃいけない
 あめになってふるんだ」

こわい雲にどやされてしずくは地上に
降らされる!

雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

敵意を感じさせるほどに降り続く雨が
人の心までおびやかす。
南の島の湿った空気。
教化するという一方的な(暴力的な)
使命に心酔する牧師は
自分をあざ笑う娼婦の魂を救おうと
説教し祈り続ける。二人の関係は
変化し女は牧師に依存し許しを求め、
ついに魂を救済し満足感に浸る牧師が
最後にしたことは。


陰鬱な雨だ。

犬とあいさつ[本]

朝バス待ちしてたらおじいさんが連れてる老犬(多分)が
笑顔でよた・よた・よたとよってきてさわらせてくれた。
(他の人にはわき目もふらず一直線に)
指先ペロペロされるのも久しぶりでほにゃほにゃになったな〜。
心ゆくまで遊びたいな〜。

頭のうちどころが悪かった熊の話

頭のうちどころが悪かった熊の話

大きなこぶをこさえた熊はレディベアをさがす。
レディベアって誰だったかおぼえてないけど
大事な相手で、いつもそばにいてくれた気がしていた。

頭のうちどころが悪かった熊がいとしい
恋人レディベアの愛の表現がいとしい。
ヘビの子どもがいとしい。
ひねくれカラスがおもしろい。
池の二人の友情に笑みがこぼれる。
父さんを着る牡鹿がかわいい。
熊と三日月の関係もすてきだ。
そしてトラがいい。

そんな、動物たちが語るお話。

ことばと物語がぴったりくる。

この感じどこかであったぞと思い起こすと

だれも死なない (リエゾン・リーブル)

だれも死なない (リエゾン・リーブル)

読み直してみた。
ハリネズミ、リス、ゾウ、カメ、アリ、コオロギ、タコいろんな動物たち、
登場するのは1種1匹でみんなおなじ大きさ。
だからタニシとゾウがお茶したり、ゾウとリスがダンスしたり、
リスがハリネズミを背負って木に登ったりする。

リスが誰だかわからない“親愛なる・・・”に手紙を書いたら返事がくる
「こっちも、おーい!」や、ゾウとリスが一度きりのステップをふむ
(そして落っこちる)「ゾウのワルツ」が好きだ。
だいたいこのゾウはいつも高い所から落ちているのだ。