仕方がない女の子*[本]

「あしたはうんと遠くへ行こう」角田光代

あしたはうんと遠くへいこう

あしたはうんと遠くへいこう

章ごとのタイトルはTEENAGE FANCLUBなんかの曲名で、
最初の章では高校生の主人公が、好きな男の子にテープを作ってる。
音楽と恋がからまった女の子の15年にわたる恋愛模様を描く小説。


もちろん、疑いや迷いを持たずにいる人なんていないんだけど
やたらと自分という存在のカタチをたしかめたい、いわゆる
トンガッタ女の子には、すごく共感できるお話。


恋する相手に自分の思いを投影して巨大化させたり
恋してなければ自分がないような気がして、
この人違うかも?って思いながらやり過ごしたり
自分を本当に大事にしてくれる人には我が儘ばかりしたり。


同じような経験があるわけでもない、タイプも違うし
自分の輪郭やモヤモヤを小説の中に見出そうなんて若さは
もうない・・・少しはあるけど、この子の、学習しないまま
年を重ねてしまう女の子なあり方の中に、ほんの少しの
自分のかけらを見て、かわいくも情けなく共感する。


そして女の子はまたくりかえす。スタートを。
そこに明るい諦念はあるけど、絶望はない。

ただ私は、どこか遠くにある自分自身の中身を
これからとり戻しにいくような気がしている。
不安や失望や心細さや疑問や、そんなものの合間を
すり抜けて、電車はフルスピードで私を、どこか遠く、
想像すら及ばない場所へとつれていく。